その同人グッズは大丈夫なのか
その同人グッズは大丈夫なのか
いや、全然大丈夫じゃない。
最近、色々なサービスや原価の全体的な価格が下がり、ロット(発 注部数)が小さくなり、入稿形式も簡単になってきている。
思うところがけっこうあるので自戒のためにも記事を書こうとおも う。
このブログは私のブログなので前提として「私の考えである」が付 く。これを理解した上で読んで欲しい。
あと考えながら書いちゃうから同じ事ループしてたら教えて。自分 じゃ案外気付かないから。
■蜘蛛の糸
前置きとして、二次創作同人活動に「セーフ」はないということを 頭に置いてほしい。
二次創作同人活動(ここでは主に現実世界へのなんらかの物品とし ての産出・製作・頒布のあるなしに関わらず)は、
「公式にお目こぼしいただいている状態」だ。
何故かって言うと、他人の家に入って他人の冷蔵庫の食材を勝手に 調理してそれをさらに第三者に提供している図式のため、
「おい、何故うちの冷蔵庫の食材を使って金を取っているんだ」と いわれたら一発アウトなのである。
二次創作界隈がコミケとかのお品書きで「販売物」ではなく「頒布 物」という、日本語様様な表現をしているかというと、
「利益目的じゃないよ」とそれとなくアッピルするためである。 (だと思ってるけど違ったらごめ~んね)
一次創作は後述の商標に触れなければ自分が権利者、作者なので「 販売」と書いても差し支えないはずだけど、
版権ジャンルとの同日開催や同人界隈全体との調和がてらだったり 個人の意向で「頒布」ってなってたりする。
二次創作と一次創作、同じように活動したら痛い目に遭うので考え て行動することが必至だ。どこでもそうか。
■同人グッズは大丈夫なのか。
これは私もやっているいわゆる「創作同人」も該当し、別に物を売 らなくても同人活動にあたると思う。
「創作」=「一次創作」、書いた(描いた)本人が作ったキャラク ターやストーリーで展開されるもので、権利者は作者自身だ。
これについては何も問題は無い。純粋に一次創作部分のみであるな ら、権利者が自分でものを作って発表しているにすぎないからだ。
ただこの場合にも後述の「商標デザインの模倣」が絡んでくるなら 別途に注意が必要になる。
「二次創作活動」は、同じく趣味の自費出版、自主制作だ。
けど根本から違って、これは前述の「一次創作」を下敷きに、借り 物を使った創作活動だ。
要するに権利者以外がその権利物の絵を描いたり話を書いたりして 製作するもので、
「権利会社」「制作会社」「版元」「公式(または公式絵師の場合 もある)」以外はプロの絵描きがやろうと主婦が趣味でやろうと「 二次創作」になる。
当然、目こぼしをいただけない規模で公式の権利や利益を損害する もの、公式の展開や活動を遮るおそれのあるものを作ったりそうい った行動をしたりという事はしてはいけない。
私個人の解釈となるが、お目こぼし頂いている理由の中には「自分 で作っている」も含まれると思っている。描画、執筆という事だ。
同人誌の原稿であれば話を考えて、下書きをしてペン入れをして、 仕上げをして自分で手配をして個人レベルでやりとりをしている。
(私は漫画同人誌派だったので例はこれにする)
素材提供されていない画像などのトレース行為、転用行為は当然ダ メだ。目で見て模写するのとはワケが違うし、資料として見るのと も違う。
「公式」のデザインも同様だ。
「公式が発表した画像を自分で加工・描画してシルエットにしてグ ッズにしたので大丈夫です」→まったくもって大丈夫じゃない。
これはトレースであってもそうでなくても大丈夫じゃない。公式が 出しているものを模倣してはいけないのだ。
ここの線引きが難しいが、二次創作同人活動において、とにかく公 式からなにも引っ張ってきてはいけないのだ。
同人誌やグッズの原稿のために資料集を開いて、それを見てキャラ を描いた。これとは違うのだ。
あの子とあの子のイメージカラーがこの色なので、 二人をイメージしてクリアファイルをその色にしました。 これとも違うのだ。
キャラをシルエット化したものやラインや模様、刺青などのモチー フ「のみ」を使って作られたグッズは、勝手に公式ロゴを印刷して 頒布しているのとほぼ同じはないだろうか。
■商標デザインの模倣
私が「商標デザイン」って呼んでいるだけなのでこの呼び方が正し いのかはわからん・・・
「規定のテンプレートや絵柄が存在し、そこに版権デザインを流し 込むタイプの商品」だ。あとニトロプラスのあの人の絵柄。
これは真似してはいけないものたちだ。そのデザイン(固有のテン プレートに値するもの)自体が商標登録されている場合が多い。
そうしたら、そっちも侵害することになる。
上記のグッズを思い出してみてほしい。それぞれのキャラが流し込 まれて入るものの、共通のデザインがあるはずだ。
そしてこのテンプレートがあったりして絵柄が固定されているもの は、二次創作同人とそうでないものの一番わかりやすい境目である 「描き手の絵柄」が消えてしまう。
誰が製作したのか、一見してわからなくなってしまう。
「故意じゃないなら…」となるかもしれないが「いや絶対故意でし ょ」ともなるかもしれない。
「このシリーズでこのキャラ出してほしい!」で描いてみるだけな のと、それをグッズに三次元に実現させてしまうのとでは危うさが 段違いだ。
最悪、そのつもりはなくても海賊版扱いされてしまうかもしれない という事を考えて欲しい。
でも最近は何故か公式のデフォルメグッズが同人臭い絵柄になって たりするから油断ならない。気を引き締めていこう。
それから、いろんなアニメグッズを思い浮かべてみてほしい。
すべてのグッズがかきおろし絵柄だろうか?おそらくは違うだろう 。
キャラのシルエット、既存イラストの加工、キャラを象徴する何ら かの模様、柄、紋章、作品ロゴのみ…
数多の作品とグッズはあれど、このパターンは固い。
想像してみてほしい。「明らかに同人グッズ」に見えるものとそう でないもののボーダーラインを。正にいけないボーダーラインだ。
公式と混同(誤解)される恐れのあるグッズは金額をつけて頒布す べきではないのではないだろうか。
最近は滅茶苦茶に絵のうまい絵描きさんや滅茶苦茶にデザインがす ごい人、手先が滅茶苦茶器用な人などが滅茶苦茶いっぱいいる。
全体的に昔よりもできることが増えているし、質も高い。
だからこそ作り手も譲り受ける側もそのデザインや内容に気をつけ てみるべきではないだろうか。
■アウトオブアウトの無許可立体物
同人誌印刷会社の出した「アクリルフィギュア」がちょっとざわつ いた時があった。ちょっとだけ。
アクリルキーホルダーは平面イラストをアクリル板に印刷したもの だ。
アクリルフィギュアは、同じくアクリル板に印刷したものだが、切 り離してスタンドにあたるパーツに差し込むとアクリルフィギュア になるという寸法だ。
二次創作同人において、立体物の製作はご法度だ。
何故ご法度か、平面とはまた決まりごとがちがうから、としか言い ようが無い。
私も正直言ってこの分野は詳しくはないので間違ったことをいう訳 にもいかない。
「ワンフェス開催当日にのみそのフィギュアを販売していいですよ 」という許可を申し込んで得ている。
申し込む先は版元だ。版元が「血のりが不適切」とか「露出が多す ぎる」とかいろんな理由が出てでダメといったらダメで、とにかく 販売はできない。
オリジナルのフィギュアなら、前述の一次創作同人と同じように販売も通販も複製・再販も自由だ。
ただ、版権物はこのワンフェス当日に版権が下りた(許可を得た) もののみしか販売することはできない。
従って、この範疇外であるイベントで自作フィギュアや、フィギュ アと呼べる程度のものではないとしても、人型でなかったとしても 、
とにかく平面を脱してしまったもの、これらは一切頒布することが できない。
やわらかく言えば「望ましくない」、はっきり言うと「するな」の 一言になる。
一部では「手作りアクセサリー」に苦言が出たりしたので、立体は 立体でも実際難しいラインだ。
個人の作品として製作するのは悪くないはずだ。悪くないと思う。
そういうのはどんどん見たいし、是非見せて欲しい。自分には作れ ないものだから尚更だ。
でも版権を得ていない限り、販売しちゃいけないのだ。
■一旦ストップ、大丈夫かそれ(大丈夫じゃない)
ここまでで同人活動の危なさと必要な警戒について話してきたつも りだけど、伝わっているだろうか。
あともう一つ、これは個人的な話だ。
「 公式のデザインに似すぎている同人物は公式の芽を潰すかもしれな い」という話をしたい。
Aという会社から出ているBというキャラがに刺青があったとする 。
Aという会社はBをグッズにする権利を持っていて、公式グッズも 展開されていたとする。
しかしファンがそのBの刺青のデザインをそのまま転用(そのまん まかトレスどっちでも)か、模倣して二次創作同人活動としてグッズを作って価格をつけ、頒布したとする。
そうすると、 もしかすると公式はそのグッズを製作できなくなるのではないだろ うか?
ファン発案のものを「おっ このアイデアはいいぞ。商品化させてもらえないだろうか」という ケースも勿論あるだろう。それは嬉しい。
(でもここで「公式に採用された!」 という盛り上がりを超えて大きな振舞いをするファンも居る為注意 してほしい)
ただ、逆に「詳細なデザインを描いたり使われたりすると商品化で きなくなる」という可能性はないだろうか?
ファンが製作したものを「ありがとう!」と受け取って楽しくやっ てくれる企業もあるかもしれない。
ただ、そうじゃない企業もある。「所変われば」 を忘れてはいけないのだ。
「こういうのが欲しい!」と考えを出すのはいいかもしれないが、 公式が出した図案や紋様、公式と類似するまたはそのままのシルエ ット、キャラモチーフ、
そのまま使って頒布して本当に大丈夫なのか。 打ち出す前に考えて欲しい。
まあそのまんまは当然ダメなんだけどさ、 一切なにも考えないよりはいいじゃん。
「公式グッズです」と他所で売りに出してしまうかもしれない。
「世に出た時点で作品は自分のものではなくなる」という話もある 。
しかし作ったのは作った人本人である。これは揺るぎようが無い事 実だ。
ファンが細々と楽しくやっているからいいじゃん、では許されない 場合というのはいつか出てくる。
趣味でも商業的なものでも、作ったからには責任を持たないといけ ないということを忘れては居ないだろうか。
あと活動に関して言うのであれば、ケチが付くよね。「あの人はア レをやった人だよ」って
公式の画像をそのまま使ったり、トレパクしたり、自覚無自覚関係 無しに炎上してるよね。まとめとか作られるし。
そういうのっていつまでも、どこまでも付いて来るよ。
好きな作品と同士と楽しくやって行きたいなら活動には気をつける べきでは?
私はいつも自分でも自覚する程度には大げさに話をする。
でも、他人の権利物を使って遊ぶ、楽しむというのはそれくらい気 をつけなきゃいけないことなのだ。
そして同時に、「寛容な界隈」を見た人が他所で同じような感覚で 活動してしまわないかという事も畏れている。
二次創作同人は「公式」の寛容と見てみぬふりで楽しませて頂いて いる。
実際、「この人があなたの会社のキャラでこんなにスケベな絵を描 いてましたよ!!!」と公式に通報された所で、公式も困るだろう 。
無視すれば「許している」ととられるし、取り締まってもキリがな いしロクなことがない。
公式とお互いは不干渉、これが一番ではないだろうか。
「距離が近くて親しみやすい」「ファン活動を喜んでくれる」とは別のお話だ。
「公式よファンを無視しろ」という訳ではない。何かを作って発表 するだけのエネルギーのあるファンがいるというわかりやすいパラ メータでもあるだろうし。
ファンの中で流行したネタを公式が取り入れたとて、「ファンに媚 を売るな」と言うわけでもない。ちょっとビビるけど。
ただ、「仲良し」と「フレンドリー」それから「なれなれしい」、 「親切」と「過干渉」、「積極的に触れ合ってくれる」と「介入せ ざるをえない状態」のラインを見誤ってはいけない。
どれだけ公式との距離が近かろうと、昔からのファンであろうと、 勘違いしてはならない線はある。「顧客」なのだ。あくまでも。「 友達」ではない。
ここまで、「ものを作るな」「活動するな」という話ではない。
出来ることが増えて、ハードルが下がる。
道具が便利になって、安く流通する。
そうすれば多くの人の手に渡って発展していくが、 それをちゃんと扱える人の手元にばかりあるものではない。
「料理をしてみたかったが道具が高くて手が出せなかった。 ここで買えて助かった」という人もいれば
「包丁が簡単に手に入った」と思うだけの人、 そして簡単に手に入ったもので誰かを傷つける人だっている。
自分は大丈夫、でももし大丈夫じゃない人がいたら?
意思がどうであれそういうのはどこにだって絶対にいるものなのだ 。
教えて理解してくれる人も、教えられて理解できない、しない人も 、教えられたけど理解したけどわかってくれない人も居る。
子供でもしっかりと判断して自分で考えたり調べたりできる人も居 るし、やらかしてしまったらごめんなさいが出来る人もいる。
いい歳した大人でも誰かに何かを与えられる、 教えられるのをずっと待っていて、なにかあれば「 知らなかったから」 で収束ではなく風化か誰かがやってくれるのを待つだけの奴も居る 。
常に考えて活動しなければならない。そんなもんの巻き添えを食っ て楽しい事を取り上げられるのはごめんだ。
私だってびっくりしている。
学校で先生に教えられずとも、他者の領域に入る時はそれについて程度はともかく自分で調べるも のだと思っていたから。
二次創作者が立っているのは地盤や地面の上ではない。
公式はお釈迦様、活動できているのは蜘蛛の糸のおかげ。 蓮の葉に登れる事はなく、糸を切られたら終わりなのだ。
公式を困らせず、自分たちも楽しく、やっていけたら一番いい。そ う思った。